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『没!』

1 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:43 ID:8./Kx4uM
見たままの小説スレです。

2 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:43 ID:8./Kx4uM
『弟』

3 :ぬぁ:01/09/18 01:44 ID:LACRYyLg
いいスレだ 心からそう思う

4 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:45 ID:8./Kx4uM
 ヒグラシの鳴き声を聴くといつも、小っちゃい頃のことを思い出す。
「よく聞いてごらん真希。ヒグラシはカナカナカナカナ、エゾハルゼミ
はミョーケンミョーケンケケケケケ、だろ?」
 そう教えてくれたのはパパ。セミの脱け殻を扱うのが得意だったけ。
ユウキとあたしが何度やっても壊してしまうそれを、苦もなく拾い上げ
る人だった。
 パパが死んでから5年。あのときも今年のように水不足だったんだっ
け? 悔しいことに小5のあの夏のことは殆ど覚えてない。担任の先生
もクラスメイトも天気も事件も毎年夏になると必ず通わされていたスイ
ミングスクールのことも、なにも。今でも覚えてるのはセミたちの神経
に障る鳴き声だけ。

5 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:45 ID:8./Kx4uM
「あんたんとこユウキから連絡ない?」
 ケータイで掛けるとき名乗りもせずにいきなり用件を切り出すのは
ママの悪いクセだ。番号を押し間違えてたらどうするんだろっていつ
も思う。
「ないよ。最近あんま顔合わせないし」
「そう……じゃあ、いいわ」
「なんで? ユウキどうかしたの?」
「ねぇ真希、あんた今度いつ帰ってくるの?」

6 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:46 ID:8./Kx4uM
 あたしの質問にママは質問で返した。たぶんいつもあたしの言うこと
なんかなにも聞いてない。ママは自分の喋りたいことを喋るだけ。だい
たいのことを聞き流すあたし。どっちもどっちの似た者親子だ。
「明後日ぐらい。今日明日ってライヴあるし」
「ぐらいって、いい加減ねぇ。ユウキね、いま行方不明なのよ」
「え」
「失踪って言うのかしら。ホントもう、あのコったら……」
「行方不明とか失踪ってなにそれ。どういう意味?」
「いないってことよ。掴まらないの。連絡とれないのよねぇ」
 溜息混じりに電話は切れた。

7 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:50 ID:8./Kx4uM
 ちょっとだけボーゼンとして、すぐに電話した。和田さん。和田さんと
いうのは、あたしが入った頃のモーニング娘。のマネージャーの総責任者
で、今はユウキのいるグループEE-JUMPの担当で、要するに事情通
で。
 和田さんは石黒さんが辞めることを伝えたときのようなあの歯切れの悪
い調子で、ユウキがマネージャーさんの一人と派手に口喧嘩してEE-J
UMP辞めるなんて大見得切って泊まっていたホテル飛び出したことを
教えてくれた。
 あいつバカ。ものすごいバカ。ものすごい我侭。ものすごい自分勝手。

8 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:51 ID:8./Kx4uM
 話を聞いてるうちにカァッって頬が熱くなった。気分悪い。すごいム
カつく。
 芸能人が仕事をブッチするのって、学校の授業をブッチするのとは全
然違う。
 だって、EE-JUMPって、たった二人しかいないんだよ?
 出演る仕事だって、バラエティじゃないじゃん。歌番組ばかりじゃん。
ソニンちゃん一人でどうしろって言うのさ。無責任。すごい無責任。
 猛烈に怒って。
 唐突に醒めた。

9 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:51 ID:8./Kx4uM
 たかがそんなことぐらいでここまで腹が立つ自分がひどくつまらない
人間のように思えた。あたしは、学級委員みたいな小学校の終わりの会
で心底怒ったように頬を真っ赤にしてクラスメイトの不正を告げ口する
ような、新聞やTVニュースで悲惨な事件が起きるたびに犯人に本気で
腹を立てるような、そういったことがひどく嫌いだった。理屈とかカッ
コ悪いとか、そんなんじゃなくて、ただいやでいやで、それだけだった。

10 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:55 ID:8./Kx4uM
「ねぇ、矢口さぁん。芸能人の仕事すっぽかしってぇどー思いますー?」
 珍しく一番乗りで楽屋についたあたしは、朝からメンバーが来るたびに
同じ質問を繰り返す。矢口さんは、ニコッて笑って、
「サイッテー」
 低い声で早口に言った。
「アハッ、ですよねぇ……」

11 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:57 ID:8./Kx4uM
 一日経って、ユウキはまだ見つかってない。ケータイもずっと留守電
だ。さっきからコールしてるけどママもつかまんない。あたしは自分の
ケータイを二つ折りにパチンと畳んで、ポケットにしまった。ひやっと
した感触がまるで水のなかにいるみたいだった。この感じ知ってる。海
の底に沈むみたいに、自分とそれ以外が水の膜で隔てられる感じ。八畳
間のすみっこでユウキと二人で膝を抱えて、山岳救助隊だとか警察とか
親戚とかに電話をかけまくってるママの背中を見ていたときの感じ。自
分がどんどん遠ざかっていくあの感じ。冷たくて静かで胸だけが苦しく
て溺れて死にそう。ユウキのことでこんな苦しいなんてバカみたいで、
そんでまたムカついた。

12 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:57 ID:8./Kx4uM
(略)

13 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 01:58 ID:8./Kx4uM
 台風が直撃した痕の残る街は、瓶に詰めて清掃済みってラベルを貼り
たいぐらい清潔だった。どこまでも打ち水をしたように爽やかに濡れて
いるアスファルト。掃き清めたように路肩に寄せられた落ち葉。雲と雲
の隙間からのぞく空は、気持ちよく蒼褪めている。

 きっとこの夏も覚えてるのはセミたちの神経に障る鳴き声だけ。

14 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 02:00 ID:8./Kx4uM
-了-

15 :地獄の鼓笛隊:01/09/18 02:01 ID:8./Kx4uM
以上、2ちゃんねる閉鎖騒動でナニ書くつもりだったのか忘れて
しまったM-Seek名作集バトル用小説でした。市井のことを書く
つもりだったような気がする・・・

16 :名無しさん:01/09/18 02:11 ID:54JF3nLs
名作だ。

17 :名無し募集中。。。:01/09/18 03:54 ID:QqGcb8hQ
マンコ

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